第41章 【澤村 大地】ヒーロー ~転校生~
ザワザワザワ
「佐藤ひろかです。よろしくお願いします」
私は教壇で挨拶をして、指定された席に座った。
クラス中からの視線が集まっているのがわかる。
私はそれに気づかないフリをして、カバンから出した教科書を机の中に閉まった。
「俺、澤村大地。よろしくな」
隣の男の子が声をかけてきた。
私はよろしく。とだけ告げて再び前を見た。
「あっ、澤村!佐藤さんの前の学校と授業の進み具合確認しといてくれ!」
担任の先生がホームルームを終えて、教室を出ようとした時、隣の席の男の子に声をかけた。
彼は分かりました。と軽く首を縦に振って、私の方に身体を向けた。
「次は数学だから…佐藤の学校はどこまで行ってた?俺たちは今このへん…」
ぺらぺらと開く彼の教科書を覗き込んだ。
「あぁ…そこならもうやってるから大丈夫」
私はせっかく親切に聞いてくれた彼に少し冷たくそう言った。
それなのに彼は全然気にする様子もなく話を続けた。
「そうか~。やっぱ向こうは進むの早いんだな!ちなみにどこの高校だったんだ?」
・・・っ
どうせ学校名を言った所で分からないくせに…。
そう思って、区だけを伝えた。もちろん彼は分かっていない様子だった。
休み時間には何人かのクラスメイトが話しかけに来た。
私は当たり障りない対応をする。どうせ、あと1年。私は東京の大学に行くんだ。そして別れた友人達と慣れ親しんだ街で過ごすんだ。仲良くなるだけ別れが辛くなる。私はそう思っていた。