第41章 【澤村 大地】ヒーロー ~転校生~
「何にもないね…」
「まぁ、そう言うなよ。いい所だぞ?」
車の揺れで荷物が倒れてくるのを必死に押えながら、私は見慣れない町並みに目を向けた。
今日からここで生活するのか…。私は憂鬱でしかなかった。
私は2歳までこの街にいたらしい。
そんな幼い時の記憶なんてない。
物心ついた頃には東京で暮らしていたから。
母は昔から病気がちで東京の大きな病院に入院するために引っ越したって聞いたことがある。
そして昨年末、母は病気で亡くなった。
それを機に父の故郷である宮城に引っ越してきたのだ。
私はもう高校生だし、一人で東京に残りたいと思ったけど、今まで家事は私がやっていたし、母が亡くなったばかりの状態で父を一人にするのは少し心配だった。
大好きな友達ともお別れして、私はこの街へ来たのだ。