第38章 【東峰 旭】もう一度だけ・・・
「東峰くん、今週末はデートですか?」
昼休み先輩が俺を茶化しに来た。
俺の隣に先輩は座り、他には誰もいない休憩室で俺は愚痴をこぼした。
「いや、サークルのイベントがあるらしくて帰ってこなくなりました」
先輩は一瞬止まって、ゆっくり口を開いた。
「・・・私なら、どんな事があっても彼氏に会いに行くけどな」
そう言って先輩は席を立って、俺を見た。
「私なら東峰くんにそんな顔させないよ?私にしなよ。私、東峰くんのこと好きだから」
そう言って先輩は休憩室を出て行った。
先輩が俺の事を好き?
その日、仕事に集中出来なかった。
案の定、こっ酷く叱られた。
仕事終わり、がっつり凹んだ俺はひろかのことを思い浮かべていた。
ひろかの声が聞きたい。
俺は職場を出たらすぐに電話をしようと心に決めた。
ピロン
携帯が鳴った。
俺は急いでバッグから携帯を取り出す。
ひろかからのメールだ。そう思った。
お疲れ~
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お疲れ様。
今日の失敗はもしかして
私がいきなり告白したからかな(><)?
でも私の気持ちは嘘じゃないから!
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届いていたのは先輩からのメールだった。
俺はそのメールに返信をしなかった。
俺にはひろかという彼女がいる。
すぐにひろかに電話をした。
「おかけになった電話番号は現在電波の届かない所にあるか…」
機械の声が俺のひろかに送るSOSを簡単に遮断した。
「なんで出ないんだよ…」
俺は携帯をギュッと握りしめた。