第38章 【東峰 旭】もう一度だけ・・・
ジリジリジリっ
目覚ましの音を消し、カーテンを開ける。
全然眠れなかった。ボーっとする。
シャワーを浴び、俺はいつもと同じように職場へ行った。
「おはよう、東峰くん!」
職場で話しかけてきたのは2つ上の先輩。
すごく明るくて、職場でもムードメーカー的な存在の彼女に入社当時から良くしてもらっていた。
「なんか、元気なくない?」
先輩が俺を覗き込んでそう尋ねた。
俺はこのもどかしい気持ちを先輩に話した。
「そっか。私も大学行ったことないからわかんないけど、大学に行った友達は毎日違うことが起きて、刺激的って言ってたな。私たちとは真逆だね」
先輩の言葉に余計に落ち込んだ。
「ちょっとー!元気だしなよ!次の連休に帰ってくるんでしょ?それまでの辛抱だって!」
先輩は俺の背中を思いっきり叩いた。
次の日、仕事終わりに携帯見るとひろかからメールが着ていた。
たわいもない内容でもついつい口元が緩んでしまう。
俺は職場を出て、すぐに電話をした。
「もしもし?今大丈夫か?」
「うん!私も今電話しようと思ってた」
大丈夫。遠くにいても俺たちは以心伝心しているのだ。
そんなロマンチックな事を考えていた。
「あのね、旭に謝らなきゃいけないことがあるの」
「・・・えっ?」
「次の連休ね、大学のサークルでイベントやることになっちゃって、帰れなくなったの」
俺はあまりの衝撃に言葉が出なかった。
「・・・旭?・・・怒ってる?」
「あっ、いや。仕方ないよな」
これが精一杯の言葉だった。