第38章 【東峰 旭】もう一度だけ・・・
無題
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仕事終わった!
ひろかは何してる?
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仕事が終わり、ロッカールームでひろかにメールをするのが日課。
俺は携帯のマナーモードを解除して、彼女からの着信音が鳴るのを心待ちにする。
いつもそうだけど、今日は特別だ。
仕事でいいことがあった。早く報告したい。一緒に喜んでもらいたい。焦る気持ちを押し殺して、俺は職場を出た。
家に着いて、ふぅ。と大きく息を吐く。
職場の人達もみんないい人で、だいぶ仕事にも慣れてきた。
自立するために1人暮らしも始めた。
社会人になったんだ。
誰もいない部屋に帰って、そう実感する。
冷蔵庫の中身をチェックして適当に夕食を作る。
料理は嫌いじゃない。
自分で作った料理をテレビを観ながら食す。
“旭の料理美味しい”
ひろかの顔をふと思い浮かべる。
俺はバッグから携帯を取り出して、画面を確認するけど彼女からの返信はなかった。
「・・・はぁ」
俺は大きくため息をつく。
高校時代、バレーに全力を注いでいた頃が懐かしい。
あの頃は楽しかったな。
ちょっとセンチメンタルな気持ちをかき消すように、俺はチャンネルをバラエティー番組に切り替えた。
テレビはとても面白かったけど、俺は鳴らない携帯を何度も何度もチェックしてしまう。
そんな女々しい自分に本当に嫌気がさす。
風呂にも入って、明日も朝から仕事なので部屋の明かりを消し布団に入る。真っ暗な部屋の中に携帯の画面の明かりだけが眩しい。
俺はしばらく携帯とにらめっこをしたけど、諦めて目を瞑った。