第34章 【岩泉 一】私を旅館に連れてって
文化祭当日。
「ひろかの衣装はこれね!」
手渡された衣装を広げる。
タイトな黒のミニスカートにデニールの低い黒のストッキング。
胸元が大きく開いた白のワイシャツに白衣。
赤縁のメガネ。
「ねぇ…これって?」
ハロウィンっぽさがなく疑問に思い、衣装担当の友達に聞いた。
「何でもいいって言ってたから、委員長に相談したら女医って言われてさ!」
「ミス青城のひろかが帰りに診察をしてくれるって言えば、長居しないから回転率が上がって売上もあがる!!」
横から委員長がドヤ顔で話に入ってきた。
さすが。商売人の親を持つ子は回転率まで考えるんだ。と少し感心する。
「あっ、でも、はじめには内緒だから、はじめが担当時間は私も裏方やらせてね?」
根回しは完璧。
あとはばれない様にするだけだ。
「ひろか、休憩一緒に回れるだろ?」
「あっ、ごめん!と、友達と回る約束しちゃった!」
はじめが教室にいない時はウエイターやる予定を入れて居たので、すっかりはじめと文化祭を回る予定を入れ忘れてしまった。
「はぁ?なんでだよ!俺は誘い断ってたのによ!」
大きくため息をついて、こっちを睨んでいた。
「ごめんね?でも裏方一緒にやれて嬉しいよ??」
私がそう言うと照れて満更でもない顔をする彼。
少し機嫌が直ったみたい。