第34章 【岩泉 一】私を旅館に連れてって
「今年こそは取りてぇな、優勝」
下校時、彼はボソっとそう言った。
「はじめって、そういうの興味ないかと思ってた」
「いや、勝負事は基本負けたくないだろ?」
負けず嫌いはバレーだけじゃなかったんだ。
そう思うと自然と笑いが込み上げてくる。
「何笑ってんだよ。…それに最後の文化祭だしな」
少し残念そうな顔をするから、私もちょっとセンチメンタルになる。
はじめとは別々の大学に行く。だから、こうやって毎日一緒にいれるのはもう少しなんだ。
「しかも、今年は温泉旅行って生徒会奮発したよな!」
高校生活最後の思い出にはじめと一緒に温泉旅行に行きたい。私はそう思った。