第33章 【山口 忠】俺は山口忠
「はぁ・・・」
最寄りの駅に着き、重い足取りで改札に向かう。
「あっ…」
ため息の原因。彼女が今日も待っていた。
彼女は俺がツッキーから返事をもらってきていると思っているんだと思う。
俺は合わせる顔がなくて、わざとに視線を逸らして彼女の横を通り過ぎた。
「まっ、待ってください」
彼女が俺の袖を掴んだ。
「あの…名前だけでも教えてもらえませんか?」
俺は彼女に背中を向けたまま、口を開いた。
「月島蛍だよ。俺はツッキーって呼んでる」
俺がそう答えると、彼女の手の力が緩んだ。
「あなたのお名前は…?」
「おっ、俺!?」
咄嗟に彼女の方を振り返ってしまった。
「山口…山口忠」
「山口忠くん…」
改めてフルネームを呼ばれるとなんだか少し恥ずかしい。
「私は佐藤ひろかです」
彼女が俯きながらそう言った。
「ごめん、本当の事言うとさ、俺君の…佐藤さんの手紙読んじゃったんだ!」
俺がそっと目を開けると、彼女の顔が真っ赤になっていた。
「読んで頂けたんですか!?・・・あの…友達からでもいいんです!山口くん…私と友達になってもらえませんか?」
「えっ・・・?」
「私ずっと前から山口くんの事…好きでした」
俺は何が起こったのか全く理解出来なかった。
「えっ…?えっ!?ツッキーへの手紙でしょ?あれ」
「・・・山口くんへの手紙です…よ?」
「えっ…?えっ!?」
動揺する俺に彼女はくすくすと笑った。
「だって、背が高くてカッコイイって…」
「山口くん、背が高くてカッコイイです」
「いや、ツッキーの方が大きいよ?」
「私、この身長なので山口くんのお友達さんはちょっと大きすぎます。それに山口くん十分大きいです」
俺を見上げる彼女はへへ。と照れて笑った。
「・・・お友達になってもらえますか?」
そんなの答えはもう決まっている。
「もちろん・・・!」