第33章 【山口 忠】俺は山口忠
「ツッキー、おはよう!」
俺たちはまたいつもの様に駅で電車を待つ。
キョロキョロ周りを見渡すと、昨日の彼女を見つけた。
彼女もこっちを見ていて、恥ずかしそうに会釈をするので俺も軽く会釈を返す。
「何してんの?山口」
「いや、なんでもない!」
俺はすぐに彼女から視線を外した。
昨日あんな事言っちゃったし、今日こそツッキーに手紙を渡さないと…。そう思ってカバンの中から手紙を出した。
「ツッキー…。これ読むだけ読んであげてよ」
「なんで僕が?…山口が読みなよ」
ツッキーは一度その手紙に目を向けてから、すぐにヘッドフォンを装着した。
「ツッキー、今日はお昼ちょっと別の所で食べてくるね」
俺は弁当を持って中庭に向かった。
ポケットには彼女の手紙。
俺はごめん。と謝ってから封筒を開いた。
“いきなりの手紙ですいません。
毎朝、駅のホームでいつもあなたを見かけます。
背が高くて、カッコイイあなた。
お友達と楽しそうに話すあなた。
名前も知らないのにどんどん好きになりました。
よかったら、付き合って下さい!
佐藤ひろか”
「佐藤…ひろか…」
今日初めて彼女の名前を知った。
彼女の一生懸命な想いがいっぱい詰まった手紙を読んでしまった罪悪感がズシっとのしかかる。
俺はその手紙を再び封筒に戻した。
はぁ…。ため息しか出なかった。