第33章 【山口 忠】俺は山口忠
「ツッキーおはよう!!」
俺は山口忠。
烏野高校バレー部の1年生。
そして、隣にいるのが月島蛍ことツッキー。
背が高くて、勉強もスポーツも出来てカッコイイ俺が一番憧れている人。
「それでさ、こないだ教頭が・・・」
俺たちは最寄駅のホームでいつものように電車を待っていた。
朝練のため、いつも同じ時間、同じ車両に乗っていた。
「あっ・・・あのっ!!!」
背後から声をかけられて、俺たちは後ろを振り返る。
「あっ・・・いきなりすいません。あの…これ読んで下さい!」
そこにいたのは別の学校の制服を着た可愛い女の子だった。
ツッキーはその子が出してきた封筒に一度目を向けたけど、そのまま何も言わずに、ちょうど着た電車に乗り込んだ。
「ちょっ!ツッキー!?」
俺がツッキーを追って行こうとした時、彼女は俺の袖を握って、涙目で訴えていた。
「えっと、とりあえず預かっておくね?」
俺は彼女から封筒を受け取り、扉が閉じるギリギリに電車に乗り込んだ。
「ツッキー、これ読まないの?」
俺がラブレターらしき封筒をツッキーに差しだした。
「・・・なんで?」
ツッキーがそう言うから、俺はそうだよね。ってとりあえず自分のカバンにしまった。
ツッキーってモテるのに、なんで彼女とか作らないんだろう?学校でも結構女の子から話しかけられてるのに、冷たく返すし…。
まぁ、ツッキーに釣り合う女の子ってなかなかいないと思うけど!
俺がそう思いながらツッキーを見ると、何見てんの?って言われてしまった。
「ごめん、ツッキー」
それでも、カバンの中にしまわれた手紙に意識が行ってしまう自分がいた。
「ありがとうございました」
俺は今日も部活終わりに嶋田さんの所でサーブ練習をしてから帰宅した。
最寄りの駅に着き、改札に向かう途中に朝の女の子が待っていた。
俺に気付いた彼女は、ゆっくりと俺の方へ近づいてきた。
「あっ…あの…。手紙読んで…もらえ…」
まさか、ツッキーが受け取りもしなかったなんて、可哀そう過ぎで言えなかった。
「なんか、忙しくてその…まだ読んでない…から…」
俺がそう言うと彼女は残念そうだけど、どこかホッとしたような顔をしていた。
「あっ、明日にはきっと読むと思うから…」
そう言う俺に彼女はぺこりとお辞儀をして、走って行ってしまった。