第31章 【日向 翔陽】犬男子×猫女子
「おぉー!すげぇ、いい匂い!」
翔陽は焼きたてのパンの匂いにつられて店内に入る。
私はそんな翔陽の後に着いて行く。
「私、ホットコーヒー」
「俺はねぇー!アイスカフェオレとミートパイ!」
店員のお姉さんがクスっと笑い注文を確認して厨房へ戻って行った。
翔陽はワクワクを抑えられず、キョロキョロと周りを見ている。
私はそんな彼を見て笑ってしまう。
何笑ってんだよー!とちょっと怒る翔陽になんでもないって笑ったら、また翔陽が怒るんだ。
「お待たせしました!」
注文したものが届いて、私達は飲み物を口に含む。
「ひろか、砂糖入れないの??」
「私、ブラック派」
うまいの?って聞くから一口飲ませた。
予想通り、にがー!って舌を出す。
「すげぇーな、お前!」
と訳のわからない褒め言葉を頂き、私はブラックコーヒーを返してもらった。
私の向かえに座って、ミートパイを頬張る翔陽。
ミートパイの包み紙で鼻から上しか見えない。
サクサクと言う音が聞こえてくる。
「美味しい?」
私がそう聞くと、ミートパイの包み紙が口元から離れる。
「うまい!すげぇ、うまい!」
包み紙で隠れていた翔陽の口にはたくさんのパイ生地がついていた。
「口周りすごいよ?」
私がケラケラ笑うと、翔陽は急いで紙ナプキンで口を拭う。
うるせーな。と言って、また食べ始めた。
私はふふ。と笑って手元のコーヒーに目を向ける。
「ひろか!」
翔陽に呼ばれて顔を上げると、
また口周りにパイ生地をつけた顔で笑っていた。
「だから、口周りすごいから!」
私がケラケラ笑うと、今度は翔陽も笑った。
そんなやりとりを数回繰り返す。
私を笑わせようと、わざと口周りにつけて見せてきているんだ。