第29章 【菅原 孝支】私の親友は清水潔子
「ひろか~!ちょっとお使い行って来てくれる?」
休日、私は母に頼まれて街に出ていた。
頼まれたものも買い終わり、バス停に向かう途中、
聞きなれた声が聞こえてきた。
「佐藤?」
そこには制服姿の菅原くんが立っていた。
菅原くんは部活帰りに合宿のための買い物をしていたと言う。
私は菅原くんを直視出来なかった。
これ以上、菅原くんを好きになっても辛いだけ。
私はこの恋心を封印しようと決めたのだ。
「・・・佐藤?どうかしたか?」
「えっ!?」
「佐藤ってすぐ一人で抱え込む所あるだろ?俺じゃ頼りないかもしれないけど、力になれることあれば、何でもいいから言えよな?」
私はのどの奥がきゅーっと締め付けられた。
油断すると今にも涙が零れ落ちそうだった。
「俺さ、佐藤の事尊敬してんだ。だって、小さい妹の世話をしてる高校生なんてそういないだろ?」
菅原くんの言葉が私の心を締めつける。
「私、菅原くんに尊敬されるような子じゃないの。妹がいなければって思う事いっぱいある。私もみんなみたいに部活やったりバイトしたり…青春したい」
「佐藤・・・」
「私もバレー部のマネージャー出来たらもっと菅原くんといれたのに…」
堪えていた涙が一気に流れ出した。
菅原くんは慌てて、私を近くのベンチへ座らせた。
「落ち着いた?」
「・・・うん」
あれからどれくらい経っただろうか。
菅原くんは私が泣き止むまでずっと隣にいてくれた。
「帰ろうか」
菅原くんはそう言って立ち上がる。
そして、私の方を振り返ってニカって笑うんだ。
やっぱり菅原くんが好き。
たとえこの気持ちが叶わないものでも、自分の気持ちだけは伝えよう。そう思った。
「すっ、菅原くん!」
「ん?」
「私!菅原くんが好き・・・です」
私は菅原くんの顔を見れずに、俯いたまま気持ちを伝えた。
早く断って…。この間耐えられない。
「うん、俺も好き」
「・・・・」
「・・・・えっ!?」
私はビックリして顔を勢いよくあげると、菅原くんがニカっと笑っていた。
「俺も好きだよ、佐藤のこと」
帰るよ?と私に手を差し出す菅原くん。
私はポロポロと涙をこぼしながら、菅原くんの手を握った。