第29章 【菅原 孝支】私の親友は清水潔子
潔子には言っていないけど、本当は高校に入って好きな人が出来た。
「おぉーい、清水~!」
潔子によく話しかけに来る男子バレー部の菅原くん。
違うクラスだから、あまり話す機会はなかったけど、少しずつ仲良くなっていった。
そんなある日。
「・・・はい。もしもし」
昼休み、マナーモードにしていた携帯が鳴った。
私は携帯に表示される文字にドキっとした。
その胸騒ぎは的中。
妹がすごい熱を出したので迎えに来てほしいとの連絡だった。
私は動揺して、廊下にしゃがみ込んでしまった。
「佐藤…?大丈夫か?」
私が顔をあげると、そこには菅原くんが立っていた。
「どうかしたのか?」
菅原くんはしゃがんで私と目線を合わせてくれた。
「妹が…妹が・・・」
動揺する私の背中を擦って、大丈夫、落ち着いて。と声をかけてくれた。
菅原くんは私の話を聞いて、一緒に職員室へ行き、先生に事情を話してくれた。
私は先生の承諾を得て、学校を出た。
「佐藤!心配だから落ち着いたらでいいから連絡して!」
私は妹を迎えに行き、病院へ連れて行った。
安静にしていれば問題ないと診断を受けてホッとした。
妹を寝かしつけて、ふと携帯を見た。
“心配だから落ち着いたらでいいから連絡して”
菅原くんの言葉が頭をよぎって、潔子に菅原くんの連絡先を聞いて、今日の報告をした。
菅原くんからは、大事に至らなくてよかったよ。佐藤も疲れたと思うから、今日はゆっくり休めよ。
と返事が着た。
菅原くんの優しさを感じた。私はこの時、彼に恋をしたのだ。
それからというもの、菅原くんは何かと私を心配してくれた。時にはメールをくれたりする。
“特に用事ないんだけどさ…”
その言葉が妙に嬉しく感じる。
合同の体育の時何度も目が合って、バスケでシュートが決まると、菅原くんは「ナイス」と口を動かして笑ってくれた。
私は菅原くんとの距離感に少し浮かれていたんだ。