第27章 【東峰 旭】年上の彼女
それから、俺はずっと部活には顔を出さなかった。
部活を休んだ次の日に西谷に言われた。
“あんたはまたスパイク決めたいって思わないのかよ”
俺は心臓を引きちぎられそうになった。
一人でいるとおかしくなりそうで、ひろかに会いに行った。
「今日、部活は?」
「・・・あぁ…休み」
そう…と言って、それ以上ひろかは何も聞かなかった。
「そういえばさ、こないだ言ってたあの映画、次の休みに観に行かないか?」
俺は、部活の事を忘れようと必死でひろかとの予定を詰め込もうとしていた。
「・・・ねぇ、旭。ちょっと出かけよっか!」
「えっ!?」
ある日、ひろかは急に俺を夜の街に連れ出した。
「うぅ~ん、ネクタイはもう少し細めの…これかな。よし!旭、これ着てきて?」
街に出た俺たちが初めに向かったのがオシャレな紳士服ショップだった。
ひろかが俺のスーツを選んでいた。
言われるがままに試着をしてみる。
「わぁ!似合う似合う!さすが老け顔!」
ケラケラ笑うひろかに俺はハハと苦笑いで返す。
「すいません、これ全部下さい!」
「えっ?こんなの買えないよ」
焦る俺にひろかはお財布から何かを出してきた。
「ふふふ。これは魔法のカードなんです!・・・あっ、ボーナス1回で!」
俺は試着したスーツのまま店を出た。
ウィンドウに映る自分は少し大人に見えた。
ひろかが言うように元々老け顔だけど、スーツは男を大人に見せる一番のアイテムなのかもしれない。
「これだったら、補導されないでしょ!じゃぁ、次行こう!」
ひろかは俺の手を取った。
夜の街はすごく賑やかで、少し怪しい雰囲気もあって…初めて体験する夜遊びに俺は心が躍った。