第27章 【東峰 旭】年上の彼女
あれは、伊達工業戦で俺のスパイクが徹底的に止められた試合の日。
俺は西谷と用具室で揉めた後、家には帰らず彼女の家へ向かった。
もちろんひろかはまだ帰って来てなくて、俺はずっと家の前で待っていた。
「・・・旭!?」
それからしばらく経って、ひろかが帰ってきた。
ひろかは冷え切った俺を部屋に入れて、風呂を沸かしてくれた。
「・・・はい、これ飲んで?もうすぐお風呂沸くから」
ひろかが出してくれたホットミルクはほんのり甘くておいしかった。
風呂からあがると、夕食が用意されていて、ひろかと一緒に食事を取った。
俺の異変に気付いているとは思う。
けど、何も聞かずにいつも通り接してくれた。
ひろかが夕食の片づけをしにキッチンに立った。
俺はひろかの背中を見ながら、みんなの言葉を思い出していた。
“俺が旭にばっかボール集めてたから”
“俺が繋いだボールをあんたが勝手に諦めんなよ”
“俺のせいで負けたんだろうが!”
ガタンっ
「あっ、旭!?」
俺はキッチンにいるひろかの唇を強引に奪った。
ひろかが強張っているのは分かっていた。
でも、それでもどうにも出来ない気持ちをひろかにぶつけるしか出来なかった。
「あさ…ひ、やめ・・・て」
抵抗するひろかの両手をシンクに置かせ、後ろから覆いかぶさるように動きを封じた。
強引にただただ自分の欲望のままひろかを求め、
何度も何度も強く抱きしめた。
我に返った時には、ひろかはもう床に倒れ込んでいて、俺は自分のした事の愚かさに後悔しかしなかった。
俺は床に座り込んで、ひろかに謝った。
すると、ひろかはゆっくり俺の元に来て、優しく抱きしめてくれた。
「旭…大丈夫。私は全然平気だよ…」
ひろかの優しさにその日は涙が止まらなかった。