第4章 【岩泉一】空回りの恋
あぁー!クソッ!!
午後からの授業が全く頭に入ってこなかった。
絶対嫌。
それは俺と付き合う事がか?
あぁー!頭をかきむしり、
机の上に顔を伏せた。
「スパイク練習ー!」
コーチの声に部員たちは素早く準備を行う。
ひろかとは一度も目が合わない。
絶対嫌。
ひろかの言葉がリピートされる。
「………っぶないっ!!」
ドサッ
ボールが頭に当たったのか、
痛みと共に視界が真っ暗になった。
「痛てて…」
目が覚めるとカーテンで仕切ったベッドの上にいた。
カーテンの向こう側には人がいる気配がした。
勢い良くカーテンを開けると、
そこには及川が立っていた。
「…お前かよ」
その言葉を聞いた及川がいつものようにニヤついて近づいてきた。
「なにー?ひろかかと思ったー?」
俺はそのまま布団の中に戻った。
「ねぇー岩ちゃん。岩ちゃんって、
ひろかのこと好きなの?」
ガバッ!!
「おまっ、何言ってんだ!」
違うの?ととぼけた顔でこっちを見た。
「あいつは、その…妹みたいなもんで…」
「へぇー。じゃぁ、ひろかのこと女として見てないって事ー?
俺はめっちゃ見てるけどねー!
高校入って更に可愛くなったし♪」
鼻歌を歌いながら、指に巻いたテーピングを外していた。
「てめぇ、ひろかの事、変な目で見んなっ!」
「岩ちゃんはひろかのお父さんですか?」
いつもならすぐに殴りかかれたけど、
まだ頭痛が取れずにぐっと拳を握りしめた。
「それとも、やっぱり岩ちゃんもひろかのこと、女として見てるんだ?エローい目で?」
ニヤリと笑う及川に今までにない怒りを感じた。
「ちげーよ!ひろかの事は、女とかそう言うんじゃない!」
ガタッ
俺たちが音のする方を見ると、
俺たちのカバンを持ったひろかが立っていた。
「あっ、部活終わったから…2人のカバン持ってきたんだけど…」
そう言って、ひろかはその場から走って行ってしまった。
「やっべー」
及川がすぐにひろかを追いかけた。