第4章 【岩泉一】空回りの恋
あぁー!くそっ!!!
まだ頭痛は収まっていない。
けど、気づいたら俺は2人の後を追っていた。
「あいつら、どこ行きやがった」
校内を探し回ってると、一つの教室から光が漏れていた。
「…だって、好きなんだもん」
教室の中には及川の腕の中で
なだめられているひろかの姿があった。
「そーだよねー。ひろかは昔から好きだったもんねー」
昔から?
及川はひろかが自分を好いていることを気づいていたのか?
ポリポリと頬をかきながら及川は苦笑いをする。
「及川てめぇー!」
俺は教室の扉を勢い良く開け、及川の胸ぐらを掴んだ。
「てめぇ、ひろかの気持ち知ってて、そんなチャラチャラと!」
ドサッ
「痛…」
倒れこんだ及川にかぶさる様に
馬乗りになった。
「ひろかを泣かせる奴はぜってぇー許さねぇー!」
俺が殴りかかったその腕を
及川が力強く握り止めた。
「岩ちゃんはひろかのなんな訳?
岩ちゃんにとやかく言われる覚えはないよ?」
いつもチャラチャラしている及川の顔が今までに見たことのない真剣な表情になっていた。
分かってる。
俺がやっていることはただの八つ当たり。
「お前は…俺よりタッパもあるし、
顔だって整ってるし、
バレーだって、凄いやつだ。
誰よりも努力してる。
女の扱いだってうまい。
分かってる。俺よりお前が選ばれることくらい。
けど…、ひろかを思う気持ちは誰にも負けねぇーよ!
お前にはぜってぇー渡さねぇー!」
「………ぷっ」
及川の吹き出した笑い声が響き渡った。
「ひろかー!聞いてた?」
及川がそう言うと、ひろかの顔が一気に赤くなった。
「よかったじゃーん。長年の片想い実ったじゃーん!」
俺は訳がわからなくて、
赤くなったひろかを見つめた。
「だって…私のこと女として見てないって…言ってた…」
ハッとして、俺はひろかの元へ向かった。
「お前は…ずっと前から妹なんかじゃねぇーよ。
及川より絶対幸せにしてやるから、
あいつなんかやめて俺にしろ!」
ひろかはゆっくりと俺の背中に手を回し、
俺の胸に顔を埋めた。
「あのー。岩ちゃん?ひろか?
俺の存在忘れてない?」
俺たちは勢い良くお互いの身体を離した。