第26章 【月島 蛍】バカじゃないの?
「あっ!どうしよう!今何時か分かりますか?」
「ごめん、俺も携帯置いてきちゃったから…」
ついつい話に夢中になっていたら、日が沈んできていた。
私たちは海の家からかなり離れた場所まで来ていて、人影がなく、シーンと静まっていた。
「早く、蛍の所に戻らないと!」
焦って戻ろうとする私を、相沢さんが引き止めた。
「ひろかちゃん、俺…会ってすぐで変かもしれないけど、俺…ひろかちゃんが好きだ!彼氏がいるのは知っているけど、俺の方がきっとひろかちゃんを幸せに出来る自信があるよ」
相沢さんがすごく真剣な顔をそう言ってくれた。
嬉しかった。でも、その時私の脳裏に映ったのは蛍の顔だった。
「・・・ごめんなさい。でもやっぱり私…蛍が好きなんです」
私は相沢さんにお辞儀をしてその場を去ろうとした。
「ちょーっと待った」
「相沢~、珍しいじゃん。お前がしくじるなんて」
去ろうとした私の前に現れたのは、さっきのナンパ男たちだった。
「相沢・・・さん?」
私は後ろを振り返ると、さっきまでの優しい相沢さんはいなかった。
「ひろかちゃん、ごめんね~。俺、こいつらと何人俺に落ちるか賭けててさ~。さっきの話とかも全部ウソだから」
「お前、最低ーーー」
「「アハハハハ」」
「ってことで、お前ら持ってっていいぞ」
相沢さんがそう言うと、さっきのナンパ男たちが私の腕を掴んだ。
「いや、やめて・・・!」
「あれでしょ?結局長身のイケメンが好みなんでしょ?簡単に騙されるとかバカでしょ?」
私は自分のバカさに涙が止まらなかった。
ナンパ男たちの言うとおりだ。
本当私って・・・
「バカじゃないの?」
「けっ、蛍!?」
そこには呆れた顔で私を見る蛍が立っていた。
「あの、その人離してもらえますか?」
「残念。それは無理~。それか俺たち3人相手にケンカでもする?」
「・・・いえ」
「アハハハ!ひろかちゃん、見捨てられてる~可哀そう~」
本当に見捨てられたんだ…。
私は蛍の顔を見ることが出来なかった。