第26章 【月島 蛍】バカじゃないの?
「ねぇねぇ!一人なの?俺らと遊ばない?」
私が一人で砂浜を歩いていると、
大学生くらい?の男性達が話しかけてきた。
私はそんな彼らを無視して歩き続けた。
「ねぇ、無視しなくてもいいじゃない?」
私が無視したのが気に障ったのか、さっきまでヘラヘラしていたのに急に怖い顔になった。
「いいから、こっち来なよ?」
一人の男の人が私の腕をグッと強い力で引っ張った。
「痛っ!やめてくださっ…!」
“蛍…!助けて!!!”
ドカッ
私が必死に抵抗したその時、急に私の腕を掴んでいた男性が突き飛ばされた。
「俺の連れなんで、ちょっかい出さないでくれる?」
ナンパ男たちはすぐに立ち上がって、その場を去って行った。
「大丈夫?」
「・・・はい。ありがとうございます」
私を助けてくれたのは見知らぬ男性だった。
「まだ、さっきの男たち近くにいるかもだから、このままカップルのフリして歩こう」
そう言ってその男性は私の手を優しく握って歩き出した。
「へぇ、女子高生か~。若いね~」
私を助けてくれた相沢さんは近くの大学に通う大学生で、今日は一人で海に来たという。
蛍くらいの長身で、黒髪の短髪の美形。
さっきのナンパ男に比べて、すごく清潔感があって好青年って感じだった。
「いや、でもフリだとしても女子高生…しかもこんな可愛い子と手を繋ぐってなんか照れくさいな」
さらっと女性を褒める大人な感じとその後に見せる照れ笑いの可愛さ。きっとこの人モテるんだろうな…そう思った。
「相沢さんってすごくモテそうですよね」
「えっ?モテないモテない。今日だって傷心旅行?的な?」
相沢さんの話を聞くと、彼女がいたんだけど
全然彼女が自分を好きなのか分からなくて、結局はフラれてしまったと言う。
私にとってその話は他人事に思えなくて、私は相沢さんの話に聞き入ってしまった。
「そっかぁ…ひろかちゃんも大変だね」
「はい・・・もう蛍のことが分からなくて…」
「俺なら、こんな可愛い彼女いたら、手繋いで浜辺歩いて自慢したいけどな~」
「もう、何言ってるんですか!」
私はそう言いながらも、私が欲しい言葉をくれる相沢さんに少しときめいてしまっていた。