第25章 【菅原 孝支】ファンファーレ
「「おつかれっしたー」」
部活が終わり、俺は教室に忘れ物を取りに行った。
「・・・あれ?」
教室にいくと、まだ電気がついていて、
中からは人の声が聞こえた。
そーっと覗くと、吹奏楽部が練習をしていた。
同じ楽器の人達ばかり。
おそらく楽器ごとで練習をしているのだろう。
~♪
演奏が始まってしまい、俺は入るに入れなくなった。
「はいはいはい!ストップ!」
演奏が止められた。
「セカンド、サードだけでもう一回」
演奏を止め、部員たちに指示をしているのは佐藤だった。
佐藤の指示で、もう一度演奏が始まった。
「はい。ストップ。・・・うぅ~ん…。
みんなさ、なんで自分がセカンドやサードか分かる?」
「・・・まだファーストをやる実力がないから…ですか?」
その返答に、佐藤は一度姿勢を正して口を開いた。
「確かに、ファーストは技術がないと務まらない。
でも、優秀なセカンドやサードがいなければ、
どんなにファーストが上手でも全然ダメなの」
キョトンとする部員に、そうだ!と言って佐藤は教室を出た。
ガラッ
「・・・っ!菅原??・・・いい所に来てくれました」
佐藤はニカっと笑って、俺の手を引き再び教室に入った。
「ごめん、菅原。ここに座って、目を閉じて聞いてて」
佐藤はそう言って自分の位置に戻った。
こそこそと部員たちに指示をした後、
俺に目を瞑るように合図を送った。
~♪
~♪
同じフレーズが2回演奏された。
「もう、目開けていいよ」
俺はゆっくり目を開けた。
「ねぇ、どっちの方が良かった?」
「・・・2回目?」
俺がそう答えると、部員たちは驚いた顔をしていた。
「えっ!?ごめん、俺音楽とかわかんないから…」
焦って俺が言うと、佐藤はアハハと笑った。
「ファーストはどちらとも同じだけど、
1回目は通常通り、2回目は私がサードを担当。
主旋律じゃないセカンドやサードが違うだけで曲の仕上がりが全然変わるの。たった1小節に1回の八分音符でも、自分の出番、自分の出す音に誇りを持って!」
佐藤がそう言うと、一気に部員たちの士気が上がったように感じた。
そんな彼女をカッコイイと思った。