第23章 【赤葦 京治】俺って最強
彼女の部屋へ帰り、
ささっと夕食を作る。
合間を見て、部屋を片付け、
洗濯物を畳む。
俺が。
「京ちゃ~ん。つ~か~れ~た~。
メイク落とすの面倒くさ~い」
はいはい。
本当にこの人年上か?
さっきバリバリ仕事していた人と同一人物か?
俺は手がかかる妹の面倒を見ているように思えて仕方がない。
俺はメイク落としを持って彼女の所へ行く。
ソファで寝ている彼女のメイクをきれいにふき取る。
メイクを落とした彼女の素顔は
ちょっぴり幼くなって、俺はこっちの方が好きだった。
「わぁー、京ちゃんのごはん大好き」
そう言っておいしそうに俺が作った夕食を食べる。
俺がたまに作ってやらないと
平気でごはんを抜いたり、栄養ドリンクに頼ったり
本当、ほっとけない。
ピピピピ
再び携帯が鳴ると、彼女は素早く手に取り、
パソコンを立ち上げる。
一瞬で仕事モードに切り替わる。
おそらく仕事の電話だろう。
編集者の仕事はとても華やかに見えるがかなりの激務だ。
「はい。では明後日、お待ちしております」
彼女が電話を切ると、その携帯をソファの方へ投げた。
「はぁ…せっかくの京ちゃんとの時間に
邪魔しやがって…。京ちゃんなんとか言ってやってくれ~」
そう言って、後ろから抱きついてくる。
「そうですね。
さぁ…早くご飯食べちゃって下さい」
俺がいつものように流すと、ちぇっと拗ねる。
夕食の片づけも終わり、
俺がリビングに戻ると、待ってました!と
彼女は俺をソファへ呼ぶ。
俺が腰をかけると、すぐさま
俺の膝の上に頭を乗せる。
これがいつものパターンだ。
ひろかは外では誰が見ても完璧な人だけど、
家に帰った途端、人格が変わる。
いや、むしろ家の方が本当の彼女だ。
家事全般苦手で、
面倒くさがり屋のズボラ。
外ではばっちりキメているヘアスタイルも
家の中ではちょんまげを作っている。
外ではキリっとクールな感じなのに、
家では極度の甘えたがり。
でもその姿を知っているのは俺だけだった。