第22章 【及川 徹】ふざけたあいつ
「ねぇ、佐藤ちゃん!
やっと先生から部活に出ていいって言われたんだ!」
放課後、あいつは私の元へ来てそう告げた。
「…へぇ。良かったね」
「アハハ、相変わらず冷たいなー。
だからね、もう図書室行けなくなっちゃった」
寂しい?と、ヘラヘラしながら聞いてくるから
私はあいつから目を逸らして黙った。
毎日のように図書室へ来ていたあいつは
それからは一切図書室に顔を出さなくなった。
平和が戻った。そう思った。
いつものように受付に座る。
読みかけの本をペラペラとめくった。
“ねぇねぇ、佐藤ちゃん、それ面白い?”
“佐藤ちゃん、見て見て!”
“これ面白いね、佐藤ちゃん”
私はふと、あいつが座っていた椅子に
視線を移した。
「・・・ん?」
そこには一冊の本が置いていた。
「恋愛もの…」
私は読みかけの本を閉じて、その本を読み始めた。
家に閉じこもっていた少女の所に
ある少年が毎日通い励ます。
始めは少年を煙たがっていたが
次第に心を許し、少年が家に来るのを
心待ちにしているようになっていく。
少女は前のように家から出られ、
普通の生活が出来るようになった。
そして、今度は少女が少年に会いに行くのだが
少年は病気でなくなっていた。
そんな内容だった。
私は少年少女の切ない恋心に
ぽろぽろと涙が止まらなかった。
最後のページをめくると
そこにはメモ用紙が挟まっていた。
「佐藤ちゃんに読んでもらいたい本だよ」
そういえば、前にある本を好きって言ってて
私に恋愛ものは読まないのかって聞いてきたことがあった。
これをおすすめしようとしていたんだ。
私はその本を持って図書室を出た。