第21章 【烏養 繋心】夜空がとてもキレイだから、私は涙を流すんだ。
さすがに疲れたのか、繋心は寝息を立てて眠ってしまった。
繋心の寝顔はとても可愛かった。
あぁ・・・このまま仕事を辞めて、地元に帰ろうかな。
そう言ったら、絶対繋心喜ぶだろうな…。
繋心と結婚して、繋心との子供を産んで…
女は愛される方が幸せになれるって言うし、
私は繋心みたいな人が合ってるのかも…。
そういえば、結婚した友達が言ってたな。
1番に好きな人じゃない方が絶対にうまくいくって…。
私はそんな事を考えながら、繋心の寝顔を見ていた。
すると、急に繋心がガバッと起きたので、
私は咄嗟に寝たふりをしてしまった。
「やべぇ、畑仕事…って、今日は休みか」
きっと、普段は朝早くに起きて仕事をしているのだろう。
何やってんだ。と繋心はつぶやいていた。
ギシ
私は繋心が近づいて来ていることを感じた。
起きていることがバレないように、
神経を研ぎ澄ました。
繋心は私の頭を撫でていた。
繋心が私に触れるときはいつも本当に優しかった。
「ひろか先輩…好きだ。大好きだ…」
私はこの時、初めて繋心から「好き」という言葉を聞いた。
繋心のその言葉は、本当に純粋なものだと分かった。
何度も「好き」と言われた。
それでも、私はいつも奥さんの次だった。
私はこんなにもまっすぐな想いの「好き」を
もらったことがなかった。
開いた穴が修復され、繋心の想いで満たされていた私の心が繋心の「好き」の言葉で容量オーバーになり破裂した。
私は満たされない自分の心を
繋心の純粋な気持ちで満たそうと、自分勝手に利用したんだ。
繋心の気持ちを知りながら、私は繋心を受け入れた。
「ごめんなさい…繋心…ごめん…」
私は流れる涙を止めることは出来なかった。
私は服を着て、繋心を置いて部屋を出た。
まだ外は暗くて、私はゆっくり夜空を見上げた。
「わぁ…キレイ…」
私は子供のように大きな声でわんわんと泣いた。
皆川さんと別れた時には全然泣けなかったのに、
今日はどんなに泣いても涙が枯れることはなかった。