第21章 【烏養 繋心】夜空がとてもキレイだから、私は涙を流すんだ。
「おい、佐藤。ここなんだが…」
私は大学卒業後、希望の会社に就職することが出来た。
とても忙しかったけど、上司に恵まれ
充実した社会人生活をスタートさせていた。
「ここはもっとデータを反映させて…」
私の直属の上司の皆川さんは
仕事が出来て、優しくて、私の尊敬する人だった。
私が仕事でミスをした時、フォローをしてくれて、
落ち込んでいる私を食事に連れて行ってくれた。
私はどんどん皆川さんを好きになった。
皆川さんも私を好きだと言ってくれた。
でも、皆川さんの左薬指には指輪があった。
ダメだと分かっていても、私は気持ちを押さえられなかった。
いつか奥さんと別れてくれる。
私はそう信じていた。
土日は会えなくても平日はいつも一緒にいてくれたから。
なのに・・・
「ひろか、ごめん。もう終わりにしよう…」
突然、皆川さんからそう告げられた。
何もかもが嫌になった。
心に穴が開いた感じがした。
涙すら出なかった。
「…もう地元に帰ろうかな」
そんな事を考えていた時、後輩から連絡が着た。
私は何もかも逃げ出したい。
そう思って、久しぶりに帰省することにしたのだ。