第20章 【烏養 繋心】不完全燃焼
ハァハァハァ・・・
「ちょっ…と、休憩…」
俺たちは肩を大きく揺らして息をした。
「少し歩こうか」
ひろか先輩はそう言って、ゆっくりと歩きだす。
繋いだ手はそのままだった。
「へぇ。まさか繋心がコーチとはね」
ひろか先輩は、ちゃんとやれてるの?と
疑いの目で俺を見ていた。
それからひろか先輩は会わなかった間の
数年間のことを色々聞いてきた。
けど、俺は何も聞けなかった。
恋人はいるのか。
もしかして結婚しているんじゃないのか。
いろんな事が頭をよぎった。
「繋心?なんかまた考え込んでない?
繋心って、昔っから考え込むとそういう顔するんだよね」
そうだ。ひろか先輩はいつも俺の変化に気づくんだ。
ほとんど正セッターだった時期がない俺のことも
ひろか先輩はいつも見ていてくれたんだよな。
外見のキレイさだけでなく、
そういう所が俺が先輩に恋をしたきっかけだった。
今まで不完全燃焼だった先輩への恋心が
一気に噴き出しそうだった。
「先輩・・・」
俺はひろか先輩の肩を掴んで、
自分の方へ身体を向けた。
ひろか先輩は少し驚いた様子で俺を見上げていた。
心臓の音がドクッドクッと鳴っているのがわかる。
俺はゆっくり自分の顔を近づける。
早く・・・先輩、早くいつもみたいに
俺のことかわしてくれ。
・・・なんで逃げないんだよ。
もう限界だ・・・。
俺は先輩の唇を荒々しく貪った。
先輩は抵抗することなく、俺を受け入れてくれた。
「けっ…い、しんっ…」
先輩の手が俺のTシャツをぎゅっと握る。
何度も何度もキスをした。
その度に、ひろか先輩はピクッと身体を反応させる。
俺はもう先輩への想いを止めることが出来なかった。
もう、何も考えられなかった。
ホテルの部屋のドアを閉めて、
その場でひろか先輩にキスをする。
「・・・繋心…、ちょっと待って?」
ひろか先輩が可愛く言うから
俺はもう、理性なんてもんはどこかに行ってしまう。
「・・・ひろか…先輩…っ!!」
俺は、高校時代からのすべての想いをぶつける様に
ひろか先輩を何度も愛した。
自分でもこんなに元気なんだと驚くほど。
そんな俺をひろか先輩は何度でも受け入れてくれた。