第20章 【烏養 繋心】不完全燃焼
案の定、トイレから戻ると
ひろか先輩はあっという間に
他の部員たちに囲まれ、近付くことが出来なくなっていた。
「繋心~。残念だったな!
ひろか先輩取られちまって」
嶋田がニヤついた顔でこっちを見た。
「うるせー」
確かに残念だったけど、“こっそり抜けよっか”
ひろか先輩との約束を思い出すと
俺の口元が緩んでしまう。
「何、ニヤニヤしてんだよ」
「うっ、うるせー!」
俺はぐっとグラスの酒を飲みほした。
「ほら~二次会行くぞー!」
一次会が終わって、俺たちは次の店へ移動していた。
ひろか先輩は今でも他の奴らに囲まれている。
「どうやって抜け出すんだよ…」
ひろか先輩がイライラしている俺を見て、
またくすくすと笑っていた。
「じゃぁ、次のお店までダッシュ!
ペナルティあるからね?よーーーーい・・・ピッ!」
先輩が部活時代のダッシュのように、
部員たちに声をかけた。
みんな、懐かしいーー!と笑いながら
少し本気になって走り出した。
うわぁーーーーー!
酔っ払いのいい大人たちが猛ダッシュをしている。
「ふふふ。・・・よし、繋心!今だっ!」
そう言って、ひろか先輩は俺の手を取って、
別の方向に走った。