第20章 【烏養 繋心】不完全燃焼
嶋田の粋な計らいで、
当時の烏野高校バレー部の同窓会が行われた。
思いのほか、人数が集まっていて、
久しぶりに見る仲間達は相変わらずで少し安心する。
「あっ!ひろか先輩!!」
俺は入口に目を向ける。
「ごめん、遅れちゃった」
ひろか先輩は今でも変わらずキレイだったけど、
昔とはちょっと違う感じがした。
「けーいしんっ」
あれから少し経って、グラスを持ったひろか先輩が俺の隣に座った。
「久しぶりだね。元気だった?」
「あっ、はい…」
話によると、先輩は東京の大学を出た後に
そのまま東京で就職をしたようだ。
身なりもきっちりしていて、
シンプルなのに、こだわりのあるデザインで
さすが東京人…そんな感じがした。
ひろか先輩は当時も今も部員たちから人気で、
代わる代わるひろか先輩の元へお酌をしにくる。
俺の右隣に座ってはいるけど、
ずっと俺に背を向けた状態で話をしていた。
俺もひろか先輩と話したいのに…
俺がそんな事を思っていると、
先輩の左手がテーブルの下で俺の太ももの上に置かれた。
俺は驚いて、ひろか先輩の方を見ると、
にこっと笑って、また俺に背を向けて他の奴らと話をしていた。
ひろか先輩の手が乗った太ももに
神経がすべて集中したかのように、
その部分だけが熱くなっているのがわかった。
「ちょっとお手洗い行ってきます」
ひろか先輩が席を立つ。
俺は少し間を開けてトイレへ向かう。
ガチャ
「・・・あっ、繋心。どうぞ?」
トイレから出てきたひろか先輩は俺に譲るように
戻っていこうとしたので、
俺は咄嗟にひろか先輩の腕を掴んだ。
「せっ先輩・・・あの・・・」
このままひろか先輩があの場に戻ったら
他の部員たちに囲まれて、
隣に座ることは難しいだろう。
もうこうやって話すこともないかもしれない。
それに、俺の太ももに置いたあの手…
俺はとにかくひろか先輩を離したくなかった。
「・・・繋…心?」
「せっ先輩…この後抜けませんか?」
俺の必死さが伝わったのか、
ひろか先輩はくすくすと笑っていた。
「ふふ。いいよ。2次会に移動する時に
こっそり抜けよっか!」
ひろか先輩はいたずらっぽく笑った。