第2章 再会
無事京都駅に到着し、改札を出ようとした所で気づきたくないものに気づいてしまった。赤い髪の少年。見間違うはずがない、「彼」だ。
「久しぶりだね潮里。迎えにきたよ」
「お久しぶりです征十郎さん。お元気そうで何よりです」
「君は綺麗になったね。ほんの数ヶ月会ってないだけなのに見違えたよ」
「恐れ入ります」
「他人行儀なところは相変わらずだな。僕達は婚約者だろう?」
「お気になさらないでください。単なる私の話し癖なので」
「…そういうことにしておいてあげるよ。今は、ね」
こっちだという「彼」の後ろをついて行く。車が一台待たせてあった。
「潮里はこちらに来るのも久しぶりだろう?少しなら時間があるから観光して行くかい?」
「いえ、少し頭痛がするのでできれば早く休みたいのですが」
「頭痛が…?それはよくないな」
「彼」は運転手に指示を出すと、私の額に手を当ててきた。
「熱は無いようだね」
「少し疲れただけです。休めば治ります」
「無理はいけないよ、潮里」
「ご心配には及びません」
「僕が僕のものを心配するのは当然だろう?」
私は小さく溜息をつくと、それ以上何も答えなかった。。
「彼」は私に対する執着が強い。それは婚約者に対するものというより、小さな子供が自分のおもちゃを取られまいとして見せるものに似ている。「彼」の中では私が最も有益な駒なのだろう。わかっていてもあまりいい気分はしない。私も1人の人間なのだから。
「潮里、本当に大丈夫かい?何なら今日のパーティーは欠席しても」
「そういう訳には行きません」
「君ならそう言うと思っていたよ」
満足気に「彼」は笑う。私の頭痛はいよいよ酷くなってきた。
「さあ、着いたよ。潮里のために部屋を用意してある。時間までゆっくり休んでくれ」
辿り着いた先は京都市内にある赤司家の別邸。京都滞在時にはここにお世話になることになっていた。
「…ありがとうございます」
私は逃げるように用意された部屋へと飛び込んだ。