• テキストサイズ

鳥になった少年の唄

第3章 帰京


駅へと着くとICカードを渡された。通学に使っているものと同じ種類だ。

「使い方はわかるね?」

「はい。それくらいは知っています」

「ならいい。なくさないように」

そう言って先を行く「彼」の後をついて行く。お盆休みということもあり電車は空いていた。隣に座る「彼」は窓の外を見ている。東京の景色が懐かしいのだろうか。そんな感傷的になるような人でもないのに。


「ほんのしばらくの間だと言うのにどんどん変わっていくんだな」

ふと「彼」が呟いた。視線は窓の外に向けたままだ。

「この辺りは特に再開発が進められているところですから」

私も窓の外を見やりながら言うと、「彼」は視線を落とした。そして私の手を握る。

「街も人も時が経てば変わる。だが君は変わらないでいてくれ」

どうしたというのだろう。妙に感傷的なことを言うなんて。どこか具合でも悪いのだろうか。怪訝そうな視線を向けると自嘲気味な笑顔が返ってきた。

「どうなさったんですか?征十郎さん」

「いや、なんでもない。僕らしくもないな、忘れてくれ」

何かが「彼」を感傷的にさせているらしい。その何かがわかるまでにそれほど時間はかからなかった。

/ 41ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp