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鳥になった少年の唄

第3章 帰京


「彼」と並んで駅へと向かう。珍しく今日は車を用意していない。どこへ行くのか知られたくないのだろう。他愛も無い会話を続けていて、ふと「彼」の表情が険しくなっていることに気づく。どうしたというのだろうか。下手に藪を突いて蛇を出す訳にはいかないので敢えて触れずにいたら、「彼」の機嫌がどんどん悪くなっていく。「彼」の地雷に触れるような話はしていないつもりだったが、知らず触れていたのかもしれない。恐る恐る尋ねてみることにした。

「どうしました征十郎さん?眉間にシワが寄っていますよ」

「…潮里、鞄は僕が持つから日傘は反対側の手で持て。手がつなげない」

……まさかとは思うが手がつなげないというだけで不機嫌になっていたのだろうか。確かに今私の両手は鞄と日傘で塞がっている。だがそれだけのことで機嫌を損ねられたのではたまったものではない。

「少し待っていて下さい。ショルダーにしますから」

幸いと言って良いのか微妙なところだが、今日の鞄はショルダーにもできるタイプのものだ。ストラップを伸ばしてショルダーにし、片手を空ける。待ちかねたように「彼」が手をつないできた。当然のように恋人つなぎで。

「最初からこうしておけ。デートの意味がない」

「申し訳ありません」

手をつなぎたいのなら初めからそう言えばいいのにとも思いはしたが、黙っておくことにした。私の身の安全の為に。

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