第3章 帰京
夏休みも半ばを過ぎた頃、「彼」からメールが届いた。お盆休みには帰ってくるらしい。二人で会える時間を作れと言ってきた。仕方なく母に相談して14日に出かけることにした。しばらくして父から15日の夜に赤司家と食事会をすると聞かされた。2日連続で「彼」に会わなければならない。溜息が一つ、溢れた。
14日の朝、支度をしていると「彼」からメールが来た。わざわざ迎えに来てくれるという。ご苦労なことだ。支度の手を早めて指定された時間を待つ。と、五分前になって玄関の方から声がした。どうやら迎えが来たらしい。メイドの一人が私を呼びに来たので玄関へと向かうと、父と母が「彼」と話している。私の姿を見つけると、「彼」は目を細めて言った。
「おはよう潮里、迎えに来たよ。今日は一段と綺麗だね」
「おはようございます征十郎さん。わざわざありがとうございます」
今日着ているワンピースは、誕生日に「彼」から贈られたものだ。その事が「彼」の機嫌を良くしたらしい。
「それじゃあ行こうか。しばらくの間潮里をお借りします」
「ああ、いってらっしゃい。潮里、我儘を言って征十郎君を困らせたりしないようにな」
「征十郎君、潮里をよろしくお願いしますね」
「では、行って参ります」
父と母に見送られ家を出る。まだ午前中だと言うのに日差しは強く気温が高い。天気予報では今日も猛暑日になると言っていた。長い闘いになりそうだ。