第2章 再会
練習へ向かうため一足先に家を出る「彼」を見送りに行く。
「それじゃ行ってくるよ潮里、道中気をつけて帰るんだよ」
「お気遣いありがとうございます。征十郎さんもお気をつけて」
「僕としては帰ってきたら出迎えてくれると嬉しいんだが」
まだ言ってるのかこの人は。いい加減諦めてもらいたい。
「そういう訳にはいきません。私にも予定というものがありますから」
「へぇ…潮里には僕より優先すべき予定があるのかい?」
しまった。これは地雷だった。自分の迂闊さを恨むがもう遅い。「彼」の声と視線が鋭いものに変わる。
「それは興味深いな。是非聞かせてもらおうか」
「…兄が今日アメリカから一時帰国するんです。今日は久しぶりに家族が揃うんですよ」
「へぇ、遙さんがね。何故もっと早く言わないんだ。僕も東京まで行ったのに」
ついてくるつもりだったのかと思うと冷汗が流れる。
「練習を休んでまで東京へ来ることも無いでしょう。それに1年半ぶりの家族水入らずなんですから」
言外に邪魔をするなという含みを持たせたにも関わらず、「彼」はあっさりとそれを却下した。
「それなら僕はもう家族も同然だろう?なにしろ潮里の婚約者なんだから」
「確かに婚約は成立していますが、家族というのは少し気が早くありませんか」
私たちは高校生になったばかりだし、そもそもこの婚約は家同士が決めたものだ。普通の婚約者とは意味合いがちがう。