第2章 再会
眠れない夜が明けた。初めてのキス。“彼”はただ唇に触れただけでそれ以上は何も求めなかった。抱き寄せられた身体から聞こえた早鐘を打つような鼓動は私のものだったのか、それとも“彼”のものだったのか。その気になれば拒むこともできたはずなのに、何故私はそれをしなかったのだろう。
グルグルと思考だけが巡り、一睡もできなかった。ただ一つだけ確かなことは、あの時の“彼”は入れ替わる前の“彼”だったということ。重ねた唇から伝わってきた確信。元々の“彼”に戻っているのかもしれない。だがそんな淡い期待はすぐに打ち破られることになる。
身支度を整えてダイニングルームへ向かうと、出迎えてくれたのは「彼」だった。
「おはよう潮里。…眠れなかったのかい?」
どうして「彼」は気づかれたくないことまで気づくのだろうか。
「おはようございます征十郎さん。少し考え事をしていたので眠りにつくのが遅かっただけです」
「昨夜のことなら謝らない。あれは僕の本心でもあったからね」
やはりあれは“彼”だったようだ。何故だろう、少し安心している自分がいる。顔に出ていたのか、「彼」は少し複雑そうな表情を浮かべていた。
「席につこうか、潮里。朝食が冷めてしまう」
促されるままに着席し、朝食をとった。