第2章 再会
「やあ、征十郎君。久しぶりだね。しばらく見ない内に立派になったなあ。今日は小鳥遊君のところの潮里さんも一緒かい?相変わらず君達は仲がいいようだね」
「恐れ入ります」
「彼」がそう言って頭を下げるのに続いて私は黙ったまま頭を下げた。
「今日は孫の由梨華も一緒でね。由梨華、挨拶しなさい」
「ごきげんよう、征十郎様。半年ぶりですね。由梨華のこと覚えておいでですか?」
私のことはまったく無視して「彼」にだけ挨拶する由梨華嬢。わかりやすくてむしろ助かる。できることなら会話などしたくないのは私も同じだ。
「こんばんは、お久しぶりですね由梨華さん。もちろん覚えていますよ」
「本当ですか⁈由梨華嬉しい」
彼女は殊更甘えた声で「彼」に媚を売りながら、私に対して無言のプレッシャーをかける。面倒なので少し席を外した方が良さそうだ。会話が一区切りついたところで「彼」に話しかける。
「征十郎さん、私飲み物を取りに行ってきますね。それでは浜津のおじさま、一旦失礼いたします」
「潮里、その必要はない。飲み物なら僕が」
「征十郎さん、お手洗いくらい行かせてください」
「…ああ、すまない」
この場を離れるための口実にすぎないが、「彼」も納得してくれたようだ。
「では皆様一旦失礼いたします」
無難な作り笑いを向けると、会場の外へ出てお手洗いへと急いだ。