第2章 再会
夜からのパーティーの準備を口実に午後の練習の見学は辞退した。「彼」の用意してくれた車に乗り込み別邸へ戻る。やっと解放され大きな溜息が漏れる。今からなら2時間ほど休めるだろう。
2時間後、昨日と同じ美容師がやってきた。「彼」の手配らしい。ドレスに着替え髪とメイクを任せる。赤司家に出入りしているだけあってセンスがいい。昨日の大人っぽい感じの仕上がりから一転して、今日は清楚でありながら華やかさも忘れていない仕上がりだ。口数はそれほど多くはないが腕は確かだ。所属する店と彼女の名前を教えてもらおうとすると名刺をくれた。こちらへ来る時には必ず寄ると伝えると嬉しそうにお礼を言われた。
準備が終わると入れ替わるように「彼」が現れた。いつの間に帰ってきていたのか、準備もすんでいる。
「ああ、今日のドレスもよく似合うよ潮里。では行こうか」
「はい」
用意された車で会場へと向かう。昨夜は途中で帰ってきてしまったから、今夜は最後までいなくてはならない。長丁場になるが昨夜ほど体調は悪くない。問題無く過ごせるだろう、何事も無ければ。
会場へ到着すると、「彼」は当然のように私をエスコートする。必然的にまた二人で挨拶に回ることになった。昨夜は私の体調が優れないという理由で中座してそのまま帰ってしまったので、皆一様に私の体調の話をする。何度もまったく同じ内容の会話を繰り返し、そろそろ挨拶回りも終わろうかという頃私と同じくらいの年頃の女の子を連れた老人が現れた。赤司家とは遠いが親戚筋にあたる浜津家のご当主とその孫娘だ。正直なところ私はこの二人を苦手としている。浜津家も有数の名家だが、最近はあまりいい噂を聞かない。だからなのかもしれないが、ご当主は自分の手駒である孫娘を「彼」にあてがおうと躍起になっている。孫娘の方も「彼」にご執心で、私に対してあからさまな敵意をぶつけてくる。私は好んで「彼」の婚約者という位置にいる訳ではないのに迷惑な話だ。