第2章 再会
「今日のお弁当はお口に合わなかったようですね。味付けが濃すぎましたか?」
敢えて違う話題を振ってみた。だが、「彼」はまだ考えこんでいる。
「征十郎さん?」
「彼」はフッと薄く笑うと食事を再開した。
「本当に潮里には敵わないな。僕はそんな風に見えていたかい?」
どちらのことだろう。練習のことかお弁当のことか。おそらく両方だろうが。
「違いましたか?」
「いや、違わない。確かに今日は若干集中力に欠けていたかもしれないな。潮里がいたから」
ひとのせいにしないでもらいたいものだ。
「征十郎さんにしては珍しいですね」
「潮里、僕だって人間だ。嬉しいと思うことはある。だがその程度のことで集中力に欠けるのはいただけないな。僕としたことが失態だった」
「その程度」か。まあそんな所だろう、「彼」にとっての私など。私にとっての「彼」も似たようなものなのだから。