第2章 再会
「何か面白いことでもあったのかい?」
お弁当を食べながら、「彼」が問う。
「何が、ですか?」
いきなり何を言っているのかわからず、こちらからも問う。
「練習中笑っていただろう?君の笑顔を見るのは久しぶりだからね、何があったのか気になってね」
まさかあの距離で気づいていたとは。どれだけ私の方を見ていたのだろうか。呆れるのを通り越して笑ってしまう。
「そのことでしたら、ちょっと珍しいものを見つけてしまっただけですよ」
「珍しいもの?一体何だ?」
「皆さんか練習に集中している中で、一人だけ集中しきれていない選手がいたものですから」
「それは聞き捨てならないな。一体誰だ?」
やはり自覚は無いらしい。自分のことを言われているとは思っていないようだ。
「征十郎さんが一番良くご存知だと思っていましたが」
「僕が?どういうことだそれは?」
「征十郎さんでもわからないことがあるんですね。
「僕の質問に答えろ、潮里」
「答えています。むしろ私には何故貴方がわからないのかがわかりません。」
いつもの「彼」ならとうに気づいているだろう。だが今はまだ気づいていない。本当に珍しいこともあるものだ。「彼」は食事の手を止めて考えこんでいる。