第2章 再会
「潮里、1人で待っていろと言ったはずだ。声をかけられても相手にするなとも」
「彼」が現れた。向けられただけで切れてしまいそうな鋭く冷たい視線で私を見ている。逃げ出したいのを必死で堪えながら口を開く。
「申し訳ありません」
「あら、待ち人って征ちゃんだったの?征ちゃんもそんな怖い顔して女の子睨んじゃダメよ。怯えてるじゃないの」
「玲央、どういうことだ?僕の潮里に何をした?」
「私はただ他校生はここにいない方がいいって忠告しただけよ」
玲央と呼ばれた人は「彼」の怒りすら込められた声をさらりと受け流した。
「潮里は特別だ。それと僕の許可無しに潮里に話しかけるな」
「あらあらご馳走様。そんなに大切な彼女なら1人にしたりしない方がいいわよ?さっきから何人もナンパしようと隙を伺ってたから」
お願いだからこれ以上火に油を注ぐような真似をしないでほしい。「彼」の目が一段と鋭くなる。これは危険だ。
「あれー?赤司とレオ姉そんなトコでナニやってんの?」
ありがたいことにまったく空気を読んでいない声が後ろからかけられた。
「つーかその子ダレ?また赤司のファンの子?」
「なんだよまたかよ」
猫みたいな瞳が印象的な人とやたら筋骨隆々とした人が現れた。彼らもバスケ部なのだろう。「彼」と玲央と呼ばれた人に話しかける。
「その子は征ちゃんの彼女よ。アンタ達下手に話しかけると征ちゃんに殺されるからやめときなさいよ」
「うっわ赤司の彼女美っ人ー‼︎なんか納得ー‼︎」
「ああ、なんかそんな感じするわ。さっきからすげー目で睨まれてる」
せっかくこの場から逃れられるチャンスを潰す訳にはいかない。私は「彼」に話しかける。
「征十郎さん、そろそろ練習が始まる時間ではありませんか?」
「彼」は小さく舌打ちすると3人に向かって言った。
「玲央、小太郎、永吉、体育館に入れ。彼女を紹介する」
どうやらこの場から逃れることには成功したようだ。九死に一生を得た感でどっと疲れた。