第2章 再会
ゴールデンウィークで観光客が多いせいか、道が少し混雑している。だが十分な余裕を持って出発しているから練習に遅れることはなさそうだ。
「心配しなくても遅刻はしない。多少の混雑は想定内だ」
また私の心を読んだかのようなタイミングで「彼」は言う。
「…顔に出ていましたか、私?」
「ああ、潮里はわかりやすいな。僕は潮里のことならなんでもわかるがね」
普段の私はむしろ「何を考えているのかわからない」と言われることの方が多い。それを「わかりやすい」という「彼」は、怖い。
「僕が僕のものを理解しているのは当然だろう」
相変わらず冷たい目で笑いながら「彼」は言う。私は何も答えなかった。
しばらくの間続いた沈黙を破るように車が止まる。
「さあ着いたよ。ようこそ洛山高校へ」
「彼」は片手に荷物を持ち、もう片方の手で私の手を取ると恋人つなぎにした。
「体育館はこっちだ」
「彼」の案内で体育館へ向かう。道中、すれ違う洛山生の視線が痛かった。特に女子生徒は刺すような視線を向けてくる。洛山高校の敷地内で赤司征十郎と恋人つなぎで手をつないでいる私服の女がいれば誰でも視線を向けるだろう。ある意味慣れてはいるものの居心地は悪い。だがそんなことはお構いなしに「彼」は進んでいく。私は一刻も早く体育館へ着いてくれることを祈った。
目的の場所は意外に近かった。「彼」は片手に持っていたお弁当とレモンの蜂蜜漬けの入った包みを私に持たせると、命令するように言った。
「潮里はここで待つんだ。誰かが声をかけても相手にするな。僕が迎えにくるまで1人で待っているんだ。いいね?」
「わかりました」
「いい子だ潮里、すぐに迎えにくる。」
私の頭を撫でてそう言うと、「彼」は別棟の方へ歩き出した。