• テキストサイズ

鳥になった少年の唄

第2章 再会


翌日、早起きして厨房を借り、2人分のお弁当と差し入れ用のレモンの蜂蜜漬けを作った。食材は荻野さんに無理を言って用意してもらった。
練習の見学に行くのは高校に入学してからは初めてだ。中学時代には何度か行ったことがある。といっても私は部外者だから邪魔にならないように観客席で練習が終わるのを待ち、お昼休みに2人でお弁当を食べて帰るだけなのだが。

まだ“彼”が入れ替わる前、初めて見学に行く時に差し入れはなにがいいか聞いてみた。すると意外な答えが返ってきた。“彼”は少し照れながらお弁当がいいと言った。手作りでなくてもいいから、一緒にお弁当が食べたいと。“彼”がそんなことを言うのは珍しいから、驚かせようと思い母に教えてもらいながらできる限り手作りでお弁当を作った。中学生が初めて作るお弁当だから中身はたかが知れている。それでも“彼”は喜んでくれた。喜ばれれば悪い気はしない。私は料理の練習を始め、見学に誘われる度にお弁当を作るようになった。そしてそれは「彼」に入れ替わった今も続いている。正直言って今の「彼」と食事を共にするのは少し辛い。だが「彼」の中ではそれはもう既に決定事項になっているのだ。今更私が何か言ったところでなにも変わらない。
/ 41ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp