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出会えた奇跡

第2章 存在理由


「えっ…」

鏡を手渡されて見てみれば白い塊が口元についているのが分かった
これをまともに見られたのだと先程の事を考えると顔が赤くなっていくのが分かった
とにかくその場は笑って誤魔化すしかないだろう
これは昨夜付けたクリームに違いないと反省するのだった
夕べ部屋に案内され何も食べていない私を気遣ってセバスチャンさんがサンドイッチを持ってきてくれたのだ


昨夜

「シィラさん失礼してもよろしいでしょうか」

「は、はい!」

ドアのノックと共に聞こえてきたセバスチャンさんの声
突然のことで少し驚いて声が裏返ってしまった
ベッドに横たわり寝ようとしていた私は急いで起き上がってドアの前に立った

「失礼します。夕食をお持ちいたしました。お腹が空いていらっしゃると思いましてね」

セバスチャンさんの手の上には綺麗に盛り付けされたサンドイッチとお茶がセットでおぼんに乗せられていた
それを見て思わずゴクリと唾を飲む
先程、盗みをする時までは空腹のことしか頭になかったのにシエル様とセバスチャンさんに会ってすっかり忘れてしまっていた
今更だが食事を目の前に出されると空腹を思い出す
きっと安心したせいもあるだろう

「軽食です。こんなものでよろしければ…サンドイッチにバタークリームとフルーツを挟んでみました。それから甘いものですのでストレートのアールグレイを」

「い、いいんですか?私が…こんな豪華なものいただいて…」

はっきり言えば身分の高い人たちが食べていたのを見ていたことしかない料理だ
甘いものというなら尚更のこと
私たちシィラ一族は、まともな料理は口にしたことがない
調理法も知らないし素材そのものの味しか知らないのだ
目の前にあるサンドイッチは夢を思わせる程キラキラと輝いている
その隣にあるバラの模様が描かれた白いカップの中で飴色に光る紅茶
全て全て私のものなのだ
こんな日が来るなんて本当にこれは夢ではないのだろうか
急に出会った人物にこんな優しい扱いをしてくれるなんて、まるで悪魔の甘い蜜を吸っているような感覚だった

「要らないのでしたら処分させていただきますが」

「食べます!食べます!もちろんいただきます!」

テーブルに置いてもらった食事を躊躇なく頬張る
口の中が幸せいっぱいに広がった
完食した私は、そのまま眠気が襲って来てベッドへふらふらと足を運んだ
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