第2章 存在理由
「心得ております」
「…そうか。ならいい」
明後日からはとある宝石館のことで調べに行ってほしいとの話がある
なんでも謎めいたケースがあるそうだ
確か、その館の主でも開けないケースがあるらしい
その中身こそが館内一の輝きを放つ宝石という話だ
手元にある資料に目を落とすと散乱している紙を丁寧に揃える
今日の仕事はここまでだ
-チュドーーーン!!!
おはようございます
シィラです
ファントムハイヴ家の使用人になってから一日目
まさか爆撃音が目覚ましになるなんて思ってもみなかったこと
慌ててベッドの上で姿勢を正す程の音だった
窓の外を見てみれば、まだ薄暗い朝日が昇る前
ゆっくりと夢から覚めると窓の側に立つ
今まで、こんな風に日の光を真っ直ぐ見つめたことはなかった
本当にここは私にとって幻ともいえる場所だ
-コンコン
「シィラさん、起きていらっしゃいますか?」
扉の向こうから聞き覚えのある声がする
セバスチャンさんの声だ
私は急いで扉の前まで行くと声の主に話しかける
「はい…えっと…爆撃音がした気がしたのですが…」
私は扉の開け方に戸惑いながらも、そっと開けると見事に優美という言葉が似合う執事様がそこに立っていた
セバスチャンさんは指を立てて自分の口に当てると私の前まで顔を近づけてきた
そうすれば今までにないくらい鼓動が高鳴り私は、その場で硬直してしまった
「知りたいですか?爆撃音の秘密…」
片目を閉じてそう聞かれれば声が上手く出てこなくて焦ってしまう
ふっとセバスチャンさんは一度笑えば私から顔を離していく
気づけば口パクで何かを伝えようとしている自分がいることに気づく
次第に顔が真っ赤になっていくのが分かる、とても恥ずかしい
「セバスチャン…シィラが百面相をしているが…」
前方から少年であるが、どこか大人びた声が聞こえてちらりと横を見るとシエル様が無表情で立っていた
明るいところで見ると本当に貴族らしく気品のある容姿だ
暗い夜に見たサファイアも魅力的だったが今、見ると更に深い海に落ちていくかのような気分になる
シエル様の瞳に溺れるのは何故だか心地よかった
「おや。それは失礼いたしました。悪気はないのですよ。ただ貴女の顔にご馳走がついていたので少々気になりましてね」
「え…?ご馳走…?」
鏡を手渡されて顔を見てみた