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出会えた奇跡

第1章 暗闇の光


「あぁ…そう言えば名乗るのを忘れていたな。僕はシエル・ファントムハイヴだ。こっちが執事のセバスチャン」

少年の名前はシエル・ファントムハイヴというそうだ
隣にいる黒い彼は執事でセバスチャン…
成る程、ファントムハイヴ家の主とは女王の番犬だと聞いたことがあるが、まさかこの少年がそうなのかとまじまじとよく見てしまった
シィラ一族はその辺りの情報に関しては入ってくるのが早い
けれど子どもとは聞いたことがなかった
しかし、ファントム社の社長となれば相当な人物に違いない
坊ちゃんと呼ばれていたか貴族の身分の者だ、よく見てみれば身なりも良い

「シエル様ですね。そちらの方はセバスチャンさんでよろしいですか?」

「好きに呼ぶといい。さて、いきなりで悪いがシィラ…ここにお前を連れて来たのには理由がある」

馬車に乗ると道に石が敷かれているようにガタガタと揺れた
そんな中で、急にシエル様の顔つきが変わった
向かい合って座っている私たち
私の方は慣れないせいで心臓が高鳴っているのに対してあちらは冷静な態度だ
こんなに小さくてもしっかりとしている
余程、執事に鍛えられているのだろうなと思い込んでしまった

「な、何ですか…それは…」

先程、理由があると言われれば身構えてしまう程だ
ここまで来て緊張することもないかもしれないがしぜんと嫌な予感はしなかった
シエル様がふっと口角をあげれば優しい表示になって私に衝撃的な事実を告げる

「シィラには僕の使用人になってほしい」

胸が高鳴った
どうしようもないくらいドキドキと心臓がうるさい
止めようと思うにもどうすることも出来ない
これは一体、どんな感情なのか
この時は分からなかった

「わ、私がシエル様の!?え……え…」

「嫌か?」

一瞬眉を潜めて私の顔を覗き込んでくる
そんな顔をされるともやっと黒い雲が心に蓋をしたような気持ちになる
不思議だ
この人たちといると今までに感じたことのない感情が一気に溢れ出してくる

「と、とんでもないです!シエル様!わ、私がお役に立てるのなら…」

そして笑顔と共に一筋の涙が頬を伝った
悲しみのない涙は初めてだった
心が温かいものに包まれたかのようにほんわりとしている
これを何と言い表せば上手く伝わるだろうか

「…良かった。笑えるんじゃないか。その方が今までの顔よりずっといい」

シエル様は微笑した
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