第1章 6粒の幸せ〜仁王 雅治編〜
「仁王センパーイっ!!!」
遠くでうるさい後輩の声がする。
茂みの奥に隠れた俺はパタパタと走り去る後輩の足音を聞きながら、芝生の上に寝転んだ。
「んーっ…日差しがあったかいのぉ…」
うんと伸びをして、手のひらを太陽にかざす。
風は寒くても日差しは暖かい。
なんか、眠くなってきたの…。
眠い目をこすってくるりと体を反転させて、すこし体を曲げる。
うとうとと柔らかな眠気はすぐに押し寄せてくる。
部活をサボっている俺を必死に探しているであろう赤也の姿が一瞬脳裏に浮かんだ。
まああいつは容量が悪いから、柳辺りに情報を貰って俺の所に来るんだろう。
…その間、15分ってとこか。
15分寝れれば十分。
そう考えた俺は、その後に待ち構える厳しい練習の為にも考えることをやめたのだった。