第1章 6粒の幸せ〜仁王 雅治編〜
屋上の重い扉をブン太が開ける。
……ギッー…。
古く錆びた音が響き、それはゆっくりと開いた。
薄暗い校内に階段が続く。
ポケットに手を突っ込んだまま、あくびを噛み殺して校内に足を踏み入れた所で何かを感じた俺は、ゆっくりと後ろを振り返った。
「………っ」
長い黒髪が吹き上げられる風にふわりと舞う。
そこには女子生徒が、さっきまで俺がいた場所に佇んでいた。
いつの間に…。
そう思ったのも束の間。
目を閉じ、何かを感じ取っていたかのようにも見えた女子生徒が瞬きをし、こちらを振り返った。
バチッと視線がぶつかり、心臓が高鳴る。
大きく澄んだ瞳は確かに俺を移したが、彼女はすぐに視線を逸らすとまた目を閉じた。