第1章 6粒の幸せ〜仁王 雅治編〜
隣でブルリと身震いしたブン太が俺の足元にすり寄って来た。
「だいぶ寒くなったよなー」
それでも口を動かすのは止めずに菓子パンにかぶり付くブン太を見て、クスッと笑みが零れる。
「そうじゃな。…もうすぐ夏も終わる」
「秋と言えば焼き芋に肉まんにーおでんだろー?それからぁ…」
次々と菓子パンを平らげながら指を折って食べ物を数えて行く姿が視界に入る。
「ブンちゃんは食べ物ばっかりじゃな…」
「それが俺だろい?」
得意のピースサインで答えたブン太の菓子パンを奪うと、あ!と大きな声を出す。
「幸せの対価じゃ」
ニヤリと笑うとブン太は頬を膨らませた。