第1章 6粒の幸せ〜仁王 雅治編〜
それ以上何も口にしない俺を見て、ブン太は自己完結したのか違う話題を口にした。
「つか、いっつも思ってたんだけどよ、6粒しか入ってなくて100円とか高いよなー」
「俺が買ったところでは120円だったぜよ」
最後の幸せが口の中で溶けて消える。
たとえ高いと思ってもまた食べたくなるのがこのアイスのすごい所だ。
「俺だったらもっと容量が多いの買うけどなあ」
ブンちゃんらしい。
彼の性格がよく表れた言葉だ。
「高いとは思うが…美味しいのには間違いないからのぅ」
たまにどうしようもなく食べたい時がある。
6つの幸せを食べる至福の時間はとても贅沢なひと時。
「…幸せか…」
ぽつりと呟いた言葉が突如吹いた風によってさらわれる。
冷たい風が身に染みた。