第1章 6粒の幸せ〜仁王 雅治編〜
「6粒の幸せ…」
……?
長い髪を整えた彼女がポツリと呟いた言葉に、俺ははっと思い出した。
この顔…。
突然の事で忘れてしまっていたが、この女子生徒はあの時屋上で見たあの子だった。
一瞬目が合ったあの彼女ー…。
「昼休みの人…」
つんっと彼女の人差し指が鼻に触れ、驚きから体を後ろに下げる。
なっ…なんじゃ。
全ての行動が予測不能。
ぱちぱちと瞬きする俺を彼女の大きな瞳が映し出す。
「…ふふっ、にゃんこみたい」
「…っ!」
にこっと笑みを浮かべた彼女にドキッと心臓が高鳴った。
…っ、なんじゃこれは。
一瞬で心を奪われてしまった彼女の笑みにぱっと目を背ける。
おかしい。
こんな想い、今まで抱いたことはなかったはずなんじゃ…。