第1章 6粒の幸せ〜仁王 雅治編〜
透き通る声が、目を奪われる程の笑みが、予測不能な行動が…。
俺の全てを狂わせるー…。
「幸せの一粒、貴方にあげる…」
がさっと袋がこすれる音と共に、唇に冷たい感触が伝わった。
バニラアイスにチョコがコーティングされたそれは、口の中の温度で意図も簡単に溶けてしまう。
指先についたチョコをペロリと舐めとった彼女は、残りの5粒の幸せを見て満足そうに微笑んだ。
「…お前さん、俺が言うのもなんじゃが不思議な子じゃな…」
「……?」
その言葉の意味が分からないと言うように首を傾げた彼女にクスッと息を零す。
そんな俺を見て、彼女は不服そうにアイスを一粒口の中にほおりこんだ。
「…私より仁王くんの方が不思議だと思うけど」
初めて彼女の口から俺の名前が出てきた事に驚いた。