第1章 とらわれた少女
目覚めると、食事が運ばれてきたところだった。
「ミモザには、しっかり全部食べてもらうようにして。
途中で食べやめたら、介助してあげてよ。
なんだか骨ばってきて、抱き心地が良くないんだ」
イルミと執事がやりとりしているのを私は黙って眺める。
あの執事の人、名前なんだっけ。
なんだか頭がぼうっとする。
イルミのこと以外は、あんまり考えたくない。
私ってば、相当彼にいかれちゃってるみたい。
「おはよう、ミモザ。
今朝は、君の好きなものを用意してもらったよ。
ちゃんと全部食べるんだよ」
目の前には、色とりどりのフルーツで飾られた、三層のパンケーキが用意されていた。
「イルミも食べる?」
「俺は、家族とダイニングで食べるから。家にいるときはあそこで食事するのがルールだからね」
広々としたこの部屋で私はいつも一人で食事をする。
お風呂やトイレも備わっているから、何も不自由はしない。
毎日決まった時間に執事が食事の上げ下げや掃除をしにやってくるけど、言葉はほとんど交わさない。
平気よ。イルミがいてくれるから。
彼がいてくれれば、あとは何もいらない。
そんなふうに思うようになったのは、いつからだったかしら。